の好色漢であった。彼は白娘子を一眼見てから忽《たちま》ちその本性を現わした。白娘子が東厠《べんじょ》へ往ったことを知ると、そっと席をはずして後からつけて往った。そして、花のような女のその中にいることを想像してその内へ入った。内には桶《おけ》の胴のような大きな白い蛇がとぐろを捲《ま》いていた。その蛇は両眼は灯盞《かわらけ》のように大きくて金光《きんこう》を放って輝いていた。李克用はびっくりして逃げ出したが逃げる拍子に躓《つまず》いて倒れてしまった。
 李克用の家に養われている娘が李克用の倒れて気絶しているのを見つけた。家の内は大騒ぎになって皆が集まって来た。そして薬を飲ましなどしているとやっと気が注いた。家の者がどうしたかと云って訊くと、彼は連日の疲れで体を痛めたためだと云った。
 李克用の気もちが好くなったので、宴席も元のとおりになったが、やがてその席も終って客は帰って往った。白娘子はいつの間にか家へ帰っていたが、許宣に話したいことがあるのかそっと舗《みせ》へやって来た。
「今晩は、みょうに気もちがわるいから、来たのですよ」
「今晩は御馳走《ごちそう》になって宜い気もちじゃないか」

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