見ていると、もうその女が門口からあたふたと出て来た。それは白娘子《はくじょうし》であった。
「この妖婦、また来て俺を苦しめようとするのか、今度はもう承知しない、つかまえて引きわたすからそう思え」
白娘子は眼で笑っていた。
「まあそんなにおっしゃらないで、私の云うことを聞いてくださいよ、二度もあなたをまきぞえにしてすみませんが、あの衣服と扇子は、私の前《せん》の夫の持っていたものですよ、決して怪しいものじゃありません、だから疑いが晴れたじゃありませんか」
「それじゃ、俺が王主人の所へ帰った時に、何故《なぜ》いなかったのだ」
「それは、あなたの帰りが遅いものですから、婢と二人で、あなたを探しに往ったところで、あの騒ぎでしょう、私は恐ろしくなったから、船で婢の母の兄弟のいる、この家へ来ていたのです」
許宣の白娘子に対する怒は解けた。許宣は白娘子に随いてその家へ往ってそこに一泊したが、それからまた元のとおりの夫婦となった。
そのうちに李克用の誕生日が来た。許宣夫婦も進物を持って李家へ祝いに往った。李克用は筵席《えんせき》を按排《あんばい》して親友や知人を招いていた。
この李克用は一個
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