のために離縁なさるのですか。」
尹翁はその言葉が善いので、暫く代って女を世話しようといったので、金もそこで結婚することを承知した。そして日を見て両親を葬った。女は喪服を着て泣いた。舅《しゅうと》姑《しゅうとめ》を喪った時のように。
すでに葬式が終った。金は刀を懐にして行脚《あんぎゃ》の僧に化けて広陵にいこうとした。女はそれを止めていった。
「私は唐《とう》という姓です。先祖から金陵におって、あの王の悪人と同郷です。あれが広陵といったのは嘘です、それにこのあたりの舟にいる悪人は、皆あれの仲間ですから、復讎することはむつかしいのです。うっかりするとあべこべに酷《ひど》い目に逢わされますから。」
金はそのあたりを歩きながら考えたが、復讎の方法が見つからなかった。忽ち女子が復讎したということが伝わって来て、その河筋《かわすじ》で評判になり、その姓名も精しくいい伝えられた。金はそれを聞いてうれしかったが、しかし両親が殺されまた庚娘が死んだことを思うとますます悲しかった。そこで女にいった。
「幸に汚されずに復讎してくれた。この烈婦の心にそむいて結婚することはできない。」
女はもう約束ができ
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