ことになっておる。」
 といった。そしてとうとう夢が醒めたようになった。手をやってなでてみると四面は皆壁であった。庚娘は始めて自分は死んでもう葬られているということを悟った。庚娘は困ってもだえたが苦しい所はなかった。
 悪少年が庚娘の葬具が多くてきれいであったのを知って、塚を発《あば》いて棺を破り、中を掻《か》きまわそうとして、庚娘の活きているのを見て驚きあった。庚娘は悪少年達に害を加えられるのが懼《おそ》ろしいので、哀願していった。
「あなた達が来てくだされたばかりで、私は外に出ることができたから、頭の物は皆あげます。どうか私を尼寺へでも売ってください。そうすればすこしはお金になりましょう。私は決してひとにもいわないですから。」
 悪少年達は頭を地にすりつけていった。
「奥さんの貞節なことは、ほめないものはありません。私達は貧乏でしかたがないから、こんな悪いことを致しました。どうかひとにもいわないようにしてくださいますなら、しあわせです。どうして尼寺などへ売られましょう。」
 庚娘はいった。
「これは、私から好きこのんでゆくのですから。」
 すると他の一人の悪少年がいった。
「鎮江《
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