明日の準備は好いのか、」
叔父の冷たい石のやうな声が聞えた。
「あらかた出来ましたが、今日は和尚さんが留守でしたから、明日の朝、念のために、も一度行つてまゐります、」
「何時頃に行つた、」
「三時過ぎでしたよ、」
「三時過ぎと云ふと、三時半頃か、それとも過ぎてゐたのか、」
「さうですね、三時半になるかならんかでした、」
義直は何度も頭の中でころがして本当のやうになつてゐることを云つた。
「さうか、お寺の方は、それで好いとして、料理の方はどうだ、」
「それもあらかた定まつてをります、」
「呼ぶ人の通知の方も好いんだね、」
「十八にしておきました。」
「さうか、準備の方はそれで好いとして、金はどうだ、料理から、お寺への布施から、それもいつさい好いのか、」
「その金ですが、誠にすみませんが、それをお願ひしたいと思つてをりますが、」
「その金つて、明後日の費用か、」
「さうです、」
「十円か二十円なら、手許にあるが、そんな沢山な金は無いね、ぜんたい幾等入るんだ、」
「二百円ぐらゐはかからうと思ひますが、」
「その二百円を俺に出せと云ふのか、」
「それをお願いしたいと思つてるんですが……」
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