さんに、ぢきぢきお逢ひになつておきますと、手違ひがなくて宜しうございますね、」
「さうだ、明日の朝、行つてこやう、それから、あれ、魚吉の亭主はどうした、」
 義直は路路心配してゐた程叔父が自分の帰りを待つてゐないらしいので安心した。
「夕方になつて一度、夜になつてもまたまゐりましたが、お帰りがないもんですから、朝また来ると行つて帰りました。人数も若旦那がおつしやつたやうに申して置きましたから、朝でも結構でございますよ、」
「さうかね、十八と云つたかね、」
「さうでございますよ、」
「折りのことも云つたかね、」
「申しました、」
「幾等ぐらゐと云つたかね、」
「一切で六円ぐらゐとおつしやつたでせう、これくらゐにおつしやつてらしたと申しておきましたよ、」
「さうか、それで好い、」
 義直は金のこともあるから、すぐ叔父の所へ行つてこやうと思ひだした。
「叔父さんのところへ行つてこやうか、」
「お疲れでございませうが、ちよつと行つてゐらつしやるが宜しうございませう、」
「さうだね、やつぱり行つてこやう、喧しいからな、」
「それが宜しうございますよ、では、お浴衣を出しませうか、」
「好い、このま
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