間を伴《つ》れて入って来た。皆おっとりした少年であった。そこには一人の僮《こども》がいて酒肴を列べて酒盛の仕度をした。閻ははじて頭をたれていた。四郎はそれに強いて酒を飲まそうとしたが、閻は恐ろしいのでどうしても飲まなかった。
 四郎はじめ三人の者は、互いに杯をさしあって酒を飲みながら、
「大兄。」
「三弟。」
 などと呼びあった。
 夜半ごろになって上座に坐っていた二人の少年は起って、
「今日は四郎に美人を以て招かれたから、この次は、かならず二郎と五郎を邀《むか》えて、酒を買って健康を祝そう。」
 といって出ていった。
 四郎は閻の手をとって幃《とばり》の中へ入っていった。閻はその手からのがれようとしたがのがれることができなかった。四郎が去った後で閻は羞《はじ》と憤《いきどお》りにたえられないので自殺しようと思って、帯で環をこしらえて縊死《いし》しようとしたが、帯が断《き》れて死ぬることができなかった。閻はそれにもこりずに死のうとしたが、そのつど帯が断れて死ぬることができないので、それを苦しいことに思った。
 四郎はいつも来ずに閻の体がよくなるのを待って来た。そのうちに二、三ヵ月たった
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