でもやめずに女に頼んだ。
「どうか、なんとかしてくれないか。甥女が可哀そうでしかたがない。」
 女は承知した。
「では、なんとか致しましょう。」
 その翌晩になって女はいった。
「あなたのために、婢を南へやりました。婢は弱いから、殺すことができないという恐れはありますが。」
 その翌晩、女が来て寝ていると、婢が来て戸を叩いた。女が起きて扉を開けて内へ入れて、
「どうだね。」
 と訊いた。婢は、
「つかまえることができないものですから、片輪にしてやりました。」
 といった。女は笑ってその状を訊いた。婢はいった。
「はじめは旦那様のお家だと思っていましたが、いってみてそうでない事が解りました。で、婿さんの家へいってみますと、もう燈《あかり》が点《つ》いておりました。入ってみますと奥様が燈の下に坐って、几《つくえ》によりかかっておやすみになろうとするふうでした。私はそこで奥様の魂をとって、※[#「倍のつくり+瓦」、第3水準1−88−38]《かめ》の中へ入れてしまって、待っておりますと、しばらくして彼奴《あいつ》が来て室《へや》の中へ入りましたが、急に後にどいて、どうして知らない人を置いてある
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