いいます。たとえ私がそんなことをしたとしても、やっぱりあなたを愛しておるからです。それを根ほり葉ほりするのは、きれようとなさるのですか。」
金はそこでもう何もいわなかった。
その時金は甥女《めい》を養っていたが、すでに結婚してから、五通の惑わすところとなった。金はそれを心配していたが、それでもまだ他人にはいわなかった。ところで女と知りあって久しくなって心の中に思ったことは何事も口にするようになったので、ある時そのことを話していた。すると女はいった。
「こんなことなんか私の父ならすぐ除くことができるのですが、どうしてあなたのことを父にいえましょう。」
金は女の力を借るより他に手段がないと思ったので、
「なんとかして、お父さんに頼むことができないだろうか。僕をたすけると思って、やってくれないか。」
といって頼んだ。女はそれを聞いてじっと考えていたが、
「なに、あんなものは何んでもありませんわ。ただ私がゆくことができないものですから。あんなものは皆私の家の奴隷です。もし、あんなものの指が私の肌にさわろうものなら、この恥は西江の水でも洗うことができないですから。」
といった。金はそれ
前へ
次へ
全17ページ中12ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング