でないから、来たからにゃ、三日や五日は逗留《とうりゅう》していくがいいよ、ゆっくりお前さんを送ってあげるから。もし欝陶《うっとう》しいのが嫌でなけりゃ、家の後には庭がある。気ばらしをするがいいよ。書物もあるから読むがいい。」
翌日になって王は家の後へ歩いていった。果して半畝位の庭があって、細かな草が毛氈《もうせん》を敷いたように生え、そこの逕《こみち》には楊柳《やなぎ》の花が米粒を撒《ま》いたように散っていた。そこに草葺《くさぶき》の三本柱の亭《あずまや》があって、花の木が枝を交えていた。
王は小刻みに歩いてその花の下をいった。頭の上の樹の梢《こずえ》がざわざわと鳴るので、ふいと顔をあげてみた。そこに嬰寧があがっていたが、王を見つけるとおかしくておかしくてたまらないというように笑いだした。王ははらはらした。
「およしよ、おっこちるよ。」
嬰寧は木からおりはじめた。おりながらとめどもなしに笑って廃《よ》すことができなかった。そして、やっと足が地にとどきそうになってから、手を滑らして堕ちた。それと一緒に笑いもやんだ。王は嬰寧を扶け起したが、その時そっとその腕をおさえたので、嬰寧の笑い
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