》の生れかわりじゃないのですか」
女は艶めかしそうに笑った。
「貴郎は、物に怖れない方だから申しますが、私は水仙王の娘で、荷《はす》の花の精でございます、貴郎が情の深いことを知りましたので、こうしてお眼にかかることになりましたが、私は舅《おじ》さんの世話になっております、舅さんは非常に物堅い方ですから、もし舅さんに知られると、もうお眼にかかることができません、どうか舅さんに知られないように、夜そっといらして、朝も早く夜が明けない内に帰ってください」
「舅さんは、どうした方です」
「蟹の王ですよ、今この西湖の判官になっております」
朝になって寺の鐘が鳴り出したので、彭は急いで起きて帰ってきたが、それから毎晩のように行って朝早く帰った。
ある朝、二人が寝すごしたところで、女の保姆《うば》が来た。保姆はそれを見るとその足で判官に知らせに行った。それがためにあわてて起きて帰ろうとしていた彭は、判官の捕卒のために縛られてその前へ引き出された。判官は黒い頭巾《ずきん》をつけて緑の袍《ほう》を着ていた。
「曲者をひっ捕えてまいりました」
捕卒の一人は後退《しりごみ》する彭を判官の前へ引き据え
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