帰ってきたが、恐ろしくて入れないので、その足で隣へ行った。
「ああ帰ったか、どうだね、判ったかね」
老人はこう言って訊いた。喬生の顔は蒼白くなっていた。
「いや、大変なことがあった、お前さんの言った通りだ」
「そうだろうとも、ぜんたいどんなことがあったね」
「どんなことって、湖西に行って尋ねたが、判らないので、帰ろうと思って、あの湖心寺の前まで来たが、くたびれたので、一ぷくしようと思って、寺の中へ行ってみると、西の廊下の行き詰めに、暗い室があるじゃないか、何をする室だろうと思って、覗いてみると、棺桶があって、それに故奉化符州判の女麗卿の柩と書いてあったのだ、麗卿とはあの女の名前だよ」
「じゃ、その女の邪鬼だ、だから言わないことか、お前さんが骸骨と抱き合っているところを、ちゃんとこの眼で見たのだもの」
「えらいことになった、どうしたらいいだろう、それにあの女の連れてくる婢も、藁人形だ、牡丹の飾の燈籠もやっぱりあったのだ、どうしたらいいだろう」
「そうだね、玄妙観へ行って、魏法師に頼むより他に途がないね、魏法師は、故《もと》の開府|王真人《おうしんじん》の弟子で、符※[#「竹かんむり/(
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