牡丹燈記
田中貢太郎
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)方国珍《ほうこくちん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)開府|王真人《おうしんじん》の弟子
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)符※[#「竹かんむり/(金+祿のつくり)」、第3水準1−89−79]《かじふだ》
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元の末に方国珍《ほうこくちん》という者が浙東《せつとう》の地に割拠すると、毎年正月十五日の上元の夜から五日間、明州で燈籠を点《つ》けさしたので、城内の者はそれを観て一晩中遊び戯れた。
それは至正庚子《しせいこうし》の歳に当る上元の夜のことであった。家々の簷《のき》に掲げた燈籠に明るい月が射して、その燈は微赤く滲んだようにぼんやりとなって見えた。喬生《きょうせい》も自分の家の門口へ立って、観燈の夜の模様を見ていた。鎮明嶺《ちんめいれい》の下に住んでいるこの若い男は、近頃愛していた女房に死なれたので、気病《きやまい》のようになっているところであった。
風のない暖か
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