で、一年目には家を建て増し、二年目には広い大きな家を新築し、思うままに建築したが、すこしも主人の馬には相談しなかった。陶は昔の花畦《はなあぜ》が建物のためになくなってしまったので、さらに田を買って、周囲に※[#「土+庸」、第3水準1−15−60]《かき》を築いてすっかり菊を植えた。
 秋になって陶は花を車に載せて何所へか往ったが、翌年の春がすぎても帰らなかった。その時になって馬の細君の呂が病気で亡くなった。馬は黄英のことを心に思うて、人に頼んでちらとほのめかしてもらうと、黄英はにっと笑って、心の中では許しているようであった。そこで馬はもっぱら陶の帰るのを待っていたが、一年あまりしても陶はついに帰ってこなかった。
 黄英は僕《げなん》に言いつけて菊を植えたが、陶のやることとすこしもかわらなかった。そして、金をとることがますます多くなって、商人のすることにかなっていた。黄英はその金で村はずれに肥えた田を二十|頃《けい》買って、屋敷をますます立派にした。と、馬の所へ東粤《とうえつ》から客が来て陶の手紙を出した。開いてみるとそれは姉と結婚してくれという頼みであった。その手紙を出した日を考えてみ
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