と訊いたが、陶はただ笑うのみで何も言わなかった。
 二人はそこで歓を尽して別れた。翌日になった。馬はまた陶の所へ往った。新たに※[#「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2−13−28]してあったのがもう一尺にもなっていた。馬はひどく不思議に思って、
「ぜひ、その作り方を教えてください」
 と言ってしきりに頼んだ。陶は言った。
「これは口で教えることはできないですが、それにあなたは、菊で生計をたてていらっしゃらないから、そんな術はいらないでしょう」
 それから数日して陶の家はやや静かになった。陶はそこで蒲《かば》の莚《むしろ》で菊を包んで、それを数台の車に載せて何所かへ往ったが、翌年の春の中比《なかごろ》になって、南の方からめずらしい種を持って帰ってきた。そこで市中へ花肆《はなみせ》を出して売ると、十日の間に売れてしまった。陶はまた家へ帰って菊を作ったが、客がまた群集した。訊いてみると、去年陶から花を買った者は、その根を残しておいて作ったが、尽《ことごと》くつまらないものとなってしまったので、そこでまた陶から買うことになったのであった。
 それがために陶は日ましに富ん
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