欹《かたむ》くことを
珮環《はいかん》響く処|飛仙《ひせん》過ぐ
願わくは青鸞《せいらん》一隻を借りて騎《の》らんことを
曲々たる欄干《らんかん》正々たる屏《へい》
六|銖《しゅ》衣《ころも》薄くして来り凭《よ》るに懶《ものう》し
夜更けて風露《ふうろ》涼しきこと如許《いくばく》ぞ
身《み》は在り瑶台《ようだい》の第一層に
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愛卿の詩を見ると、もう何人《たれ》も筆を持つ者がなかった。
趙という富豪の才子があって、父親が亡くなったので母親と二人で暮していたが、愛卿の才色を慕うのあまり、聘物《へいもつ》を惜まずに迎えて夫人とした。
趙家の人となった愛卿は、身のとりまわしから言葉の端に至るまで、注意に注意を払い、気骨の折れる豪家の家事を遺憾《いかん》なしに切りもりしたので、趙は可愛がったうえに非常に重んじて、その一言半句も聞き流しにはしなかった。
趙の父親の一族で、吏部尚書《りぶしょうしょ》となった者があって、それが大都から一封の書を送ってきたが、それには江南で一官職を授けるから上京せよと言ってあった。功名心の盛んな趙は、すぐ上京したいと思ったが、年取った母
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