愛卿伝
田中貢太郎

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)胡元《こげん》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一|輪《りん》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「りっしんべん+(「甍」の「瓦」に代えて「目」)」、第4水準2−12−81]学無識《ぼうがくむしき》
−−

 胡元《こげん》の社稷《しゃしょく》が傾きかけて、これから明が勃興しようとしている頃のことであった。嘉興《かこう》に羅愛愛《らあいあい》という娼婦があったが、容貌も美しければ、歌舞音曲の芸能も優れ、詩詞はもっとも得意とするところで、その佳篇麗什《かへんれいじゅう》は、四方に伝播せられたので、皆から愛し敬《うやま》われて愛卿と呼ばれていた。それは芙蓉《ふよう》の花のように美しい中にも、清楚な趣のあった女のように思われる。風流の士は愛卿のことを聞いて、我も我もと身のまわりを飾って狎《な》れなずもうとしたが、※[#「りっしんべん+(「甍」の「瓦」に代えて「目」)」、第4水準2
次へ
全18ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
田中 貢太郎 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング