ほかつ》尻から四番目だと言はれる。誠に始末にをへないのである。甲田は初めそんな事を知らなかつた。ところがこんなことがあつた。三月の修業證書授與式の時に、此木田の受持の組に無缺席で以て賞品を貰つた生徒が二人あつた。甲田は偶然その二人が話してるのを聞いた。一人は、俺《おれ》は三日休んだ筈だと言つた。一人は俺もみんなで七日許り休んだ筈だと言つた。そして二人で、先生が間違つたのだらうか何《ど》うだらうかと心配してゐた。甲田は其時思ひ當る節《ふし》が二つも三つもあつた。そこで翌月から自分も實行した。今でもやつてゐる。それから斯ういふことがあつた。或る朝田邊校長が腹が痛いといふので、甲田が掛持して校長の受持つてゐる組へも出た。出席簿をつけようとすると、一週間といふものは全然《まるで》出缺が附いてない。其處で生徒に訊いて見ると、田邊先生は時々しか出席簿を附けないと言つた。甲田は竊《ひそ》かに喜んだ。校長も矢張り遣るなと思つた。そして女教師の福富も矢張り、遣るだらうか、女だから遣らないだらうかといふ疑問を起した。或時二人|限《きり》ゐた時、直接|訊《き》いて見た。福富は眞顏《まがほ》になつて、そんな事
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