、第4水準2−94−57]《こんな》話をした事があつた。
『野村さんて、餘程面白い方ねえ。』
『怎《どう》して?』
『怎《どう》してツて、ホホヽヽヽヽ。』
『可笑《をか》しい事があるんか?』
『あのね、……駿河臺に居る頃は隨分だつたわ。』
『何が?』
『何がツて、時々淫賣なんか伴れ込んで泊めたのよ。』
『其※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《そんな》事をしたのか、野村君は?』
『默つてらつしやいよ、貴方《あなた》。』と云つたが、『だけど、云つちや惡いわね。』
『マア云つて見るさ。口出しをして止すツて事があるもんか。』
『何時《いつ》だつたか、あの方が九時頃に醉拂つて歸つたのよ、お竹さんて人伴れて。え、其人は其時初めてよ。それも可いけど、突然《いきなり》、一緒に居た政男さん(從弟)に怒鳴りつけるんですもの、政男さんだつて怒《おこ》りますわねえ。恰度空いた室があつたから、其晩だけ政男さんは其方へお寢《やす》みになつたんですけど、朝になつたら面白いのよ。』
『馬鹿な、怎したい?』
『野村さんがお金を出したら、要《い》らないつて云ふんですつて、其お竹さんと
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