道だ。二人の妹は、早く歸つて阿母さんに知らせると言つて、足並揃へてズン/\先に行く。松藏は大胯にその後に跟《つ》いた。
信吾と靜子は、相並んで線路の兩側を歩いた。梅雨後《つゆあがり》の勢《いきほ》ひのよい青草が熱蒸《いき》れて、眞正面に照りつける日射が、深張の女傘の投影を、鮮かに地に印した。靜子は、この夏は賑やかに樂く暮せると思ふと、逢つたら先づ話して置かうと考へてゐたことも忘れて、もう怡《いそ》々した心地になつた。
『皆が折角待つてることよ。』
『然うか。實は此夏少し勉強しようと思つたんだがね。』
『勉強は家でだつて出來ない事なくつてよ。其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]にお邪魔しないわ。』
『それも然うだが、子供が大勢ゐるからな。』
『だつて阿母さんが那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》に待つてますもの。』
『その阿母さんの病氣ツてな甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》だい? タント惡いんぢやないだらう?』
『えゝ、其※[#「麾
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