いぢやありませんか? 眞箇《ほんと》に!』
『何を言ふんです。』と信吾は苛々《いら/\》しく言つた。そして、突然富江の手を取つて、『僕は貴女の迎ひに來たんだ!』
『まア巧い事を!』と富江は左程驚いた風もなく笑つてゐる。
信吾は、女の餘りに平氣なのが癪に障つた。そして、不圖怖ろしい考へが浮んだ。物言はずに女の手を堅く握る。
富江も暫しは口を利かないで、唯笑つてゐた。そして、『私の手なんか駄目よ、信吾さん! 女の手の樣ぢやないでせう?』
『…………』
『私は女ぢやないんですよ。』
『富江樣。』と言ひながら、信吾は無遠慮に女の肩に手をかけた。『そんなら貴女は第三性ですか? ハハヽヽ。』
『あ重い!』と言つたが逃げ樣ともせぬ。そして、急に眞面目な顏をして眤《ぢつ》と男の顏を見ながら、『眞箇よ。私|石女《うまずめ》なんですもの。子供を生まない女は女ぢやないんでせう?』そして、袂を口にあてゝ急にホホヽヽと笑ひ出した。
其夜は信吾は十時過までも富江の宿にゐた。宿の主人の老書記は臨時に隔離病舍に詰めてゐる。主婦や子供らは踊に行つて留守であつた。
で、彼が家へ歸つてくると、玄關の戸がもう閉《しま
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