の葉が、光り又消える。
『貴女は、時々|被來《いらつしや》るんですか、此處等《こゝいら》に?』
『否。……滅多に夜は出ませんですけれど。……今日は餘り暑かつたもんで御座いますから!』
『あゝ然《さ》うですか!』
話はまた斷れた。
『隨分澤山な螢で御座いますねえ!』と、今度は智惠子が言つた。
『えゝ、東京ぢや迚《とて》も見られませんねえ。』
『左樣《さう》で御座いませうねえ。』
『あ、貴女は以前東京に被居《ゐらしつ》たんですつてねえ?』
『え。』
『餘程以前ですか?』
『六七年前までで御座います。』
『然《さ》うでしたか!』と、吉野はまた何か言はうとしたが、立ち入つた身の上の話と氣が附いて、それなり止めた。
二人は又|接穗《つぎほ》なさに困つた。そして長い事默してゐた。吉野は既《も》う顏の熱《ほて》りも忘られて、醉ひ醒めの侘しさが、何がなしの心の望と戰つた。つい四五日前までは不見不知《みずしらず》の他人であつた若い美しい女と、恁うして唯二人人目も無き橋の上に並んでゐると思ふと、平生烈しい内心の壓迫を享け乍ら、遂今迄その感情の滿足を圖らなかつた男だけに、言う許りなき不安が、「男は死ぬま
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