夜の風を、四人は甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]に嬉しんだらう! 久子の兄とあの人との會話が、解らぬ乍らに甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]に面白かつたらう!
『君は天才なんだ。』恁う久子の兄が幾度か眞摯に言つた。何かの話の時、『矢張り女といふものは全く放たれる事が出來ん。男は結局一人ぽつちよ、死ぬまで。』とあの人が言つた!
 翌日久子と大澤に行つて、昨日午前再び下小路なる久子の家まで歸つた。
『日向樣は何日お歸りになります!』恁うあの人が言つた。
『明日になさいな、ねえ!』と久子が側から言つた。
『吉野さんも然う遊ばせな何卒《どうぞ》。』
『否《いや》、僕は今日午後に發ちます。』
 遂に同じ汽車で歸つて、再會を約して好摩が原で別れた。
『それだけだ。』と智惠子は言つて見た。何が(それだけ)なのか解らぬ。(それだけ)が何れだけなのか解らぬ。
 解つてるのは、その吉野が今昌作と二人加藤の家にゐる事だけだ。或はもう、加藤の家を出たかも知れぬ。出て而して、何處へ? 何處へ?
『ククヽヽクウ。』といふ
前へ 次へ
全201ページ中119ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング