だもの。』
『ぢやもう、床に就いたの?』と低めに言つて、胡散《うさん》臭い眼附をする。
『一昨日俺と鮎釣に行つて、夕立に會つたんですよ。それで以て山内は弱いから風邪を引いたんだ。』
『あら昌作さん、山内さんは肺病だつたんぢや有りませんか?』
『肺病?』と正直に驚いた顏をしたが『嘘だ!』
『嘘なもんですか。始終《しよつちう》那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》妙な咳をしてゐたぢやありませんか。……加藤さんがそ言つてるんですもの。』
『肺病だと?』
『え。』と氣がさした樣に聲を落して、『だけど私が言つたなんか言つちや厭よ。よ、昌作さん貴方も傳染《うつ》らない樣に用心なさいよ。』
『莫迦な! 山内は那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》小さい體をしてるもんだから、皆で色々な事を言ふんだ。俺だつて咳はする――。』
『馬の樣な咳を。ホホヽヽ。』と富江は笑つて、『誰がまた、那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]一寸法師さんを一人前の人|待遇《あつかひ》
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