た。
『皆が折角待つてることよ。』
『然《さ》うか。実は此夏少し勉強しようと思つたんだがね。』
『勉強は家《うち》でだつて出来ない事なくつてよ。其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》にお邪魔しないわ。』
『それも然うだが、小供が大勢ゐるからな。』
『だつて阿母《おつか》さんが那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《あんな》に待つてますもの。』
『その阿母さんの病気ツてな甚※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《どんな》だい? タント悪いんぢやないだらう?』
『えゝ、其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》に悪いといふ程ぢやないんですけど……。』
『臥《ね》てゐるか?』
『臥たり起きたり。例《いつも》のリウマチに、胃が少し悪いんですつて。』
『胃の悪いのは喰過ぎだ。朝《あさ》ツから煙草許り喫《の》んでゐて、躰屈《たいくつ》まぎれに種々《いろん》な物を間食するから悪いんだよ。』
『でもないでせうが、一体阿母さ
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