《さん》、何卒《どうか》私がなほるまでこの村にゐて下さい。何卒、何卒。
屹度四五日で癒ります。あなたは必ず私のお願ひを聞いて下さる事と信じます。
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[#地から3字上げ]ちゑ
    よしの様まゐる

     (十三)の一

 智恵子の容体は、最初随分危険であつた。隔離病舎に収容された晩などは知覚が朦朧になり、妄言《たはごと》まで言つた位。適切《てつきり》チフス性の赤痢と思つて加藤も弱つたのであるが、三日許りで危険は去つた。そして二十日過になると、赤痢の方はモウ殆んど癒つたが、体が極度に衰弱してるところへ、肺炎が兆《きざ》した。そして加藤の勧めで、盛岡の病院に入ることになつた。
 吉野は病める智恵子と共に渋民を去つた。彼は有《あ》らゆるものを犠牲に払つても、必ず智恵子を助けねばならぬと決心してゐた。
 信吾去り、志郎去り、智恵子去り、吉野去つて、夏二月の間に起つた種々《いろいろ》の事件《ことがら》が、一先《ひとま》づ結末《をはり》を告げた。
 八月も末になつた。そして、静子は新しく病を得た。
 静子の縁談は本人の希望通りに破れて了つた。この事で最も詰らぬ役を引受
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