時まだ日出前の水の様な朝光《あさかげ》が、快く流れてゐた事を思出した。
『モウ夜が明けた。』
と覚束《おぼつか》なく考へると、自分は何日《いつ》からとも知れず、長い/\間|恁《か》うして苦んでゐた様な気がする。程経てから前夜の事が思出された。それも然し、ズツト/\以前《まへ》の事の様だ。
「今日アノ方が来て下さるお約束だつた! 然うだ、今日だ、モウ夜が明けたのだもの!…………。スルト今日は盆の十五日だ。昨日は十四日……然うだ、今日は十五日だ!」
喧《かしま》しく雀が鳴く。智恵子はそれを遙《ずつ》と遠いところの事の様に聞くともなく聞いた。
『先生! 先生!』と遠くで自分を呼ぶ。不図気がつくと、自分は其処で少し交睫《まどろ》みかけたらしい。お利代は加藤医師を伴れて来て、心配気な顔をして起してゐる。
『先生、まア恁※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》所に寝て、お医師様《いしやさん》が被来《いらつしや》いましたよ。』
『マア済みません。』
然う言つてお利代に手伝はれ乍ら臥床《とこ》の上に寝せられた。
室には夜ツぴて点けておいた洋燈の油煙
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