『ホヽヽ。怎《ど》うして智恵子|様《さん》を誘つて上げなかつたの?』
『莫迦《ばか》な!』
『あら、月夜の散歩にはハイカラ|様《さん》の手でも曳かなくちや詰らないぢやありませんか? 真箇《ほんと》に!』
『何を言ふんです。』と信吾は苛々《いらいら》しく言つた。
そして、突然《いきなり》富江の手を取つて、『僕は貴女の迎ひに来たんだ!』
『マア巧い事を!』と、富江は左程驚いた風もなく笑つてゐる。
信吾は、女の余りに平気なのが癪に障つた。そして、不図怖ろしい考へが浮んだ。物言はずに女の手を堅く握る。
富江も暫しは口を利かないで、唯笑つてゐた。そして、
『私の手なんか駄目よ、信吾|様《さん》! 女の手の様ぢやないでせう?』
『…………』
『私は女ぢやないんですよ。』
『富江|様《さん》、』と言ひながら、信吾は無遠慮に女の肩に手をかけた。『そんなら貴女は第三性ですか? ハハヽヽ。』
『あ重い!』と言つたが逃げ様ともせぬ。そして、急に真面目な顔をして眤《じつ》と男の顔を見ながら、『真箇《ほんたう》よ、私|石女《うまずめ》なんですもの。子供を生まない女は女ぢやないでせう?』
そして、袂を口
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