』と、情が迫つたといふ様に声を顫した。『僕は貴女から何の報酬を望むのではありません。智恵子さん、唯、唯、です、僕は貴女から、僕が常に貴女の事を思つても可いと許して頂けば可いんです。それだけです。それさへ許して頂けば、僕の生涯が明るくなります……』
『小川|様《さん》!』と、女は佶《きつ》と顔をあげた。其顔は眉毛一本動かなかつた。『私の様なもののことを然う言つて下さるのはそれや有難う御座いますけれど。』
『ハ※[#疑問符感嘆符、1−8−77]』
『何卒その事は二度と仰しやつて下さらない様にお願ひします。』
信吾は眤と腕を組んだ。
『失礼な事を申す様ですが……』
『ウヽ……何故でせう?』
『……別に理由はありませんけれど……。』
『あゝ、貴女には僕の切ない心がお解りにならないでせう!』と、サモ落胆《がつかり》した様に言つて、『然しです、何か理由が、然《さ》う被仰《おつしや》るからには有らうぢやありませんか? それを話して頂く訳にいかないんですか?』
『…………』
『智恵子さん! 僕がこれだけ恥を忍んで言つたのに、理由なくお断りになるとは余りです。余りに侮辱です。』
『ですけれど……』
『
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