ぶる。晩酌の後で殊更《ことさら》機嫌が可《よ》いと見える。
『サ、マアお上りなさい、屹度|被来《いらつしや》ると思つたからチヤンと御馳走が出来てます。』
『それは恐入つた。ハハヽヽ。』
 傍では、静子が兄の事を訊いてゐる。
『先刻《さつき》一寸|被行《いらしつ》つてよ。晩にまた来ると被仰《おつしや》つて直ぐお帰りになりましたわ。』と清子が言ふ。
『ウン、然う/\。』と加藤が言つた。
『吉野さん、愈々盆が済んだら来て頂きませう。先刻《さつき》信吾さんにお話したら夫れは可い、是非書いて貰へと被仰つてでしたよ。是非願ひませう。』
『小川君にお話しなすつたですか! 僕は何日《いつ》でも可《い》いんですがね。』
『真箇《ほんと》に、小川|様《さん》に被居《いらつしや》るよりは御不自由で被居いませうが、お書き下さるうちだけ是非|何卒《どうぞ》……。』と清子も口を添へる。そして静子の方を向いて、
『アノ、何ですの、宅《うち》がアノ阿母様《おつかさん》の肖像を是非吉野様に書いて頂きたいと申すんで、それで、お書き下さる間《うち》、宅《うち》に被行《いらつし》つて頂きたいんですの。』
『太丈夫[#「太丈夫
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