の宝徳寺、一つは下田の喜雲寺、何れも朝から村中の善男善女を其門に集めた。静子も、母お柳の代理で、養祖母のお政や小供らと共に、午前のうちに参詣に出た。
 その帰路《かへり》である。静子は小妹《いもうと》二人を伴れて、宝徳寺路の入口の智恵子の宿を訪ねた。智恵子は、何か気の退《ひ》ける様子で迎へる。
『怎うなすつたの、智恵子さん? 風邪《おかぜ》でもお引きなすつて?』
『否《いいえ》、今日は何とも無いんですけれど、昨晩恰度お腹が少し変だつた所でしたから……折角お使者《つかひ》を下すつたのに、済みませんでしたわねえ。』
『心配したわ、私。』と、静子は真面目に言つた。『貴女が被来《いらつしや》らないもんだから、詰らなかつたの加留多は。』
『アラ其※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《そんな》事は有りませんわ。大勢|被行《いらし》つたでせう、神山|様《さん》も?』
『けどもねえ智恵子様、怎うしたんだか些《ちつ》とも気が逸《はず》まなかつてよ。騒いだのは富江さん許り……可厭《いやあ》ねアノ人は!』
『……那※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの
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