する。
『言はう。』と志郎は快活に言つて、『アレは肺病で将《まさ》に死せんとする山内謙三の艶書です。終り。』
『マア、志郎さんは酷い!』と、流石に富江も狼狽する。
『艶書?』と、皆は一度に驚いた。
『それが怎《ど》うしたの、志郎様!』と静子が訊く。
呆れてゐる信吾の顔を富江は烈しい目で凝視《みつ》めてゐた。
(十一)の一
前日富江が来て、急に夕方から加留多会を開くことになり、下男の松蔵が静子の書いた招待状を持つて町に走せたが、来たのは準訓導の森川だけ。智恵子は病気と言つて不参。到頭肺病になつて了つた山内には、無論|使者《つかひ》を遣らなかつた。
智恵子の来なかつたのは、来なければ可《い》いと願つた吉野を初め、信吾、静子、さては或る計画《もくろみ》を抱いてゐた富江の各々《おのおの》に加留多に気を逸《はず》ませなかつた。其夜は詰らなく過ぎた。
静子の生涯に忘るべからざる盆の十四日の日は、朗々《ほがらほがら》と明けた。風なく、雲なく、麗《うらら》かな静かな日で、一年中の愉楽《たのしみ》を盆の三日に尽す村人の喜悦《よろこび》は此上もなかつた。
村に禅寺が二つ、一つは町裏
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