…』と、暢気に喋り立てる。
『ワア――』と新坊はまだ泣く。
『その着物を絞つて下さい、日向|様《さん》、イヤ、それより温《あつた》めてやらなくちや。』と、吉野は裾やら袖やら濡れた己が着物の帯を解いて、肌と肌、泣く児をピツタリと抱いて前を合せる。
『私抱きませう。』と智恵子。
『構ひません。冷くて気持が好いですよ。サ、モウ泣かなくて可い、好い児《こ》だ! 好い児だ!……イヤ、恁うしてるよりや家《うち》へ帰つて寝かした方が好い。然う為ませう日向様! 此儘《このまんま》お送りしますから。温めなくちや、悪い!』
『そンだ、其《その》方《はう》が好うがンす。』と農夫《ひやくしやう》も口を添へる。
『済みません、貴方!』と、智恵子は心を籠めて言つて、『私がウツカリしてゐて這※[#「麾」の「毛」にかえて「公」の右上の欠けたもの、第4水準2−94−57]《こんな》事になつて……。』
『然うぢやない、僕が悪いんです。僕が先に川に入つて見せたんだから!』
『否《いいえ》、私……夢見る様な気持になつてゐて、つい……。』
 その顔を、吉野はチラリと見た。

     (九)の六

 星影|疎《まば》らに、川瀬
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