と、吉野は手早く新坊の濡れた着衣《きもの》を脱がせて、砂の上に仰向に臥《ね》せた。そして、それに跨る様にして、徐々《そろそろ》と人工呼吸を遣り出す。
可憐《いたいけ》な小い体を、提灯の火が薄く照らした。
智恵子は、シツカリと吉野の脱ぎ捨てた下駄を持つた手を、胸の上に組んで、口の中で何か祈祷《いのり》をしながら、熱心に男のする態《さま》を見てゐた。
大きい螢が一匹、スイと小供の顔を掠めて飛んだ。
『畜生!』
恁《か》う言つて農夫《ひやくしやう》がそれを払つた。
『ワア――』
と、眠から覚めた様な鈍い泣声が新坊の口から洩れた。
『新坊さん!』と、智恵子は驚喜《よろこび》の声を揚げて、矢庭に砂の上の小供に抱着いた。
『生きた! 生きた!』と女児等《こどもら》も急に騒ぐ。
新坊の泣き声も高くなつた。眼も開《あ》いた。
『死んだんぢやないんだよ、初めツから。』と、吉野もホツと安心した様な顔を上げて、笑ひながら女児等を見巡《みま》はした。
『ハア、大丈夫だ。』と農夫《ひやくしやう》も安心顔。
『何とハア、此処ア瀬が迅《はや》えだで、小供等《わらしやど》にや危ねえもんせえ。去年もハア…
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