し遊廓《くるわ》にかろ/″\と われ投げ入れしゴム輪の車
潮なりにいたくおびゆる神經を しづめかねつゝ女をば待つ
新内の遠く流れてゆきしあと 涙ながして女をおこす
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といふやうな歌がある、潮鳴りの滿ちし遊廓といふと先づ洲崎あたりだらう、洲崎! 洲崎! 實にこの歌は洲崎遊廓へ女郎買ひに行つた歌だつたのだ。
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寢入りたる女の身をば今一度 思へば夏の夜は白みけり
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といふのがある
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やはらかきこの心持明け方を 女にそむき一しきり寢る
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といふのがある、若し夫れ
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空黄色にぽうつと燃《も》ゆる翌朝の たゆき瞼をとぢてたゝずむ
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に至つては何うだ。聞く所によると作者近藤元といふ歌人はまだ下宿住ひをしてゐる廿一二の少年なそうだ、さうして同じ雜誌には又この人の第二歌集『凡ての呼吸』の豫告が出てゐる、其廣告文の中に次のやうな一節がある。
狂ほへる酒に夢みる情緒と、あたゝかき抱擁に微睡む官能とは、時來るや突如として眼覺め、振盪して微妙なる音
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