樂を節奏し、閃めき來つて恍惚たる繪畫を點綴す。
 著者は糜爛せる文明が生める不幸兒なり。本書は現實に浮かび出でんとして藻掻きながらも底深くいや沈みゆく著者の苦しき呼吸なり、凡ての呼吸なり。
 最も新しき短歌を知らんと欲する人々にこの集を薦む。

 糜爛せる文明の不幸兒! 最も新らしき短歌! プウ!
『現代人の疲勞』といふべきべらんめえ君[#「べらんめえ君」に傍点]の一文を讀んだ人は此處に最もよい例を見出したであらう、記者はたゞ記者の驚きを讀者に傳へるまでゞある、次の時代といふものに就いての科學的、組織的考察の自由を奪はれてゐる日本の社會に於ては斯ういふ自滅的、頽唐的なる不健全なる傾向が日一日若い人達の心を侵蝕しつゝあるといふ事を指摘したまでゞある。
[#地から1字上げ](明治43[#「43」は縦中横]・8・6「東京朝日新聞」)



底本:「啄木全集 第十卷」岩波書店
   1961(昭和36)年8月10日新装第1刷発行
初出:「東京朝日新聞」
   1910(明治43)年8月6日
入力:蒋龍
校正:小林繁雄
2009年8月11日作成
青空文庫作成ファイル:
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