たんですからな。』
『其※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《そんな》事もないけれども……訝《あや》しげなもんだね。一體僕は、慈善琵琶會なんて云ふ「慈善」が大嫌ひなんで、アレは須らく僞善琵琶會と書くべしだと思つてるんだが、それでも君、釧路みたいな田舎へ來てると、怎も退屈で退屈で仕樣がないもんだからね。遂ソノ、何かしら人騷がせがやつて見たくなるんだ。』
『同意《まつたく》ですな。』
『孤兒院設立の資金を集るなんて云ふけれど、實際はアノ金村《かねむら》ツて云ふ琵琶法師も喰《くは》せ者に違ひないんだがね。』
『でせうか?』
『でなけや、君……然《さ》う/\、君は未だ知らなかつたんだが、昨日彼奴がね、編集局へビールを、一|打《ダース》寄越したんだよ。僕は癪に觸つたから、御好意は有難いが此代金も孤兒院の設立資金に入れて貰ひたいツて返してやつたんだ。』
『然《さ》うでしたか、怎も……』
『慈善を餌《えさ》に利を釣る、巧くやつてるもんだよ。アノ旅館《やどや》の贅澤加減を見ても解るさ。』
『其※[#「麻かんむり/「公」の「八」の右を取る」、第4水準2−94−57]《
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