菊池君
石川啄木

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)恰度《ちやうど》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|酷《きび》しい

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「丿+臣+頁」、第4水準2−92−28]を埋めた

/\:二倍の踊り字(「く」を縦に長くしたような形の繰り返し記号)
(例)やう/\
*濁点付きの二倍の踊り字は「/″\」
−−

      一

 私が釧路の新聞へ行つたのは、恰度《ちやうど》一月下旬の事、寒さの一番|酷《きび》しい時で、華氏寒暖計が毎朝零下二十度から三十度までの間を昇降して居た。停車場から宿屋まで、僅か一町足らずの間に、夜風の冷に※[#「丿+臣+頁」、第4水準2−92−28]を埋めた首卷が、呼氣《いき》の濕氣《しめりけ》で眞白に凍つた。翌朝目を覺ました時は、雨戸の隙を潜って空《うそ》寒く障子を染めた曉の光の中に、石油だけは流石に凍らぬと見えて、心《しん》を細めて置いた吊洋燈《つるしランプ》が昨夜《よべ》
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