をさなき時
橋の欄干《らんかん》に糞《くそ》塗《ぬ》りし
話も友はかなしみてしき
おそらくは生涯《しやうがい》妻をむかへじと
わらひし友よ
今もめとらず
あはれかの
眼鏡《めがね》の縁《ふち》をさびしげに光らせてゐし
女教師よ
友われに飯《めし》を与へき
その友に背《そむ》きし我の
性《さが》のかなしさ
函館《はこだて》の青柳町《あをやなぎちやう》こそかなしけれ
友の恋歌《こひうた》
矢ぐるまの花
ふるさとの
麦のかをりを懐《なつ》かしむ
女の眉《まゆ》にこころひかれき
あたらしき洋書の紙の
香《か》をかぎて
一途《いちづ》に金《かね》を欲《ほ》しと思ひしが
しらなみの寄せて騒《さわ》げる
函館の大森浜《おほもりはま》に
思ひしことども
朝な朝な
支那《しな》の俗歌《ぞくか》をうたひ出《い》づる
まくら時計を愛《め》でしかなしみ
漂泊《へうはく》の愁《うれ》ひを叙《じよ》して成《な》らざりし
草稿《さうかう》の字の
読みがたさかな
いくたびか死なむとしては
死なざりし
わが来《こ》しかたのをかしく悲し
函館の臥牛《ぐわぎう》の山《やま》の半腹《はんぷく》の
碑《ひ
前へ
次へ
全48ページ中28ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
石川 啄木 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング