の尾を曳《ひ》くように感ぜらるる。しばらくすると向う岸から長い手を出して余を引張《ひっぱ》るかと怪《あや》しまれて来た。今まで佇立《ちょりつ》して身動きもしなかった余は急に川を渡って塔に行きたくなった。長い手はなおなお強く余を引く。余はたちまち歩を移して塔橋を渡り懸けた。長い手はぐいぐい牽《ひ》く。塔橋を渡ってからは一目散《いちもくさん》に塔門まで馳《は》せ着けた。見る間《ま》に三万坪に余る過去の一大磁石《いちだいじしゃく》は現世《げんせ》に浮游《ふゆう》するこの小鉄屑《しょうてつくず》を吸収しおわった。門を入《はい》って振り返ったとき、
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憂《うれい》の国に行かんとするものはこの門を潜《くぐ》れ。
永劫の呵責《かしゃく》に遭《あ》わんとするものはこの門をくぐれ。
迷惑の人と伍《ご》せんとするものはこの門をくぐれ。
正義は高き主《しゅ》を動かし、神威《しんい》は、最上智《さいじょうち》は、最初愛《さいしょあい》は、われを作る。
我が前に物《もの》なしただ無窮あり我は無窮に忍ぶものなり。
この門を過ぎんとするものはいっさいの望《のぞみ》を捨てよ。
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