し、それに変則の方をやった者は容易に入れたけれど、正則の方をやったものだと更に英語をやらなければならないので、予備門へ入るものは多く成立学舎、共立学舎、進文学舎、――之は坪内さんなどがやって居たので本郷壱岐殿坂の上あたりにあった――其他之に類する二三の予備校で入学試験の準備をしたものである。其処《そこ》で僕も大いに発心《ほっしん》して大学予備門へ入る為に成立学舎――駿河台《するがだい》にあったが、慥《たし》か今の蘇我祐準の隣だったと思う――へ入学して、殆《ほと》んど一年|許《ばか》り一生懸命に英語を勉強した。ナショナルの二位しか読めないのが急に上の級《クラス》へ入って、頭からスウヰントンの万国史などを読んだので、初めの中《うち》は少しも分らなかったが、其時は好《すき》な漢籍さえ一冊残らず売って了《しま》い夢中になって勉強したから、終《つい》にはだんだん分る様になって、其年(明治十七年)の夏は運よく大学予備門へ入ることが出来た。同じ中学に居っても狩野、岡田などは変則の方に居たから早く予備門へ入って進んで行ったのだが、僕などが予備門へ入るとしては二松学舎や成立学舎などにまごついて居た丈《だ
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