しかし何だか話して行きたい気がする。
「先生|御忙《おいそ》がしいですか……」
「ええ、なかなか忙がしいんで弱ります。貧乏|閑《ひま》なしで」
高柳君はやり損《そく》なったと思う。再び出直さねばならん。
「少し御話を承《うけたまわ》りたいと思って上がったんですが……」
「はあ、何か雑誌へでも御載《おの》せになるんですか」
あてはまたはずれる。おれの態度がどうしても向《むこう》には酌《く》み取れないと見えると青年は心中少しく残念に思った。
「いえ、そうじゃないので――ただ――ただっちゃ失礼ですが。――御邪魔ならまた上がってもよろしゅうございますが……」
「いえ邪魔じゃありません。談話と云うからちょっと聞いて見たのです。――わたしのうちへ話なんか聞きにくるものはありませんよ」
「いいえ」と青年は妙な言葉をもって先生の辞《ことば》を否定した。
「あなたは何の学問をなさるですか」
「文学の方を――今年大学を出たばかりです」
「はあそうですか。ではこれから何かおやりになるんですね」
「やれれば、やりたいのですが、暇《ひま》がなくって……」
「暇はないですね。わたしなども暇がなくって困っていま
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