野分
夏目漱石
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)白井道也《しらいどうや》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)八年|前《まえ》大学を卒業してから
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「虫+車」、第3水準1−91−55]
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一
白井道也《しらいどうや》は文学者である。
八年|前《まえ》大学を卒業してから田舎《いなか》の中学を二三|箇所《かしょ》流して歩いた末、去年の春|飄然《ひょうぜん》と東京へ戻って来た。流す[#「流す」に傍点]とは門附《かどづけ》に用いる言葉で飄然[#「飄然」に傍点]とは徂徠《そらい》に拘《かか》わらぬ意味とも取れる。道也の進退をかく形容するの適否は作者といえども受合わぬ。縺《もつ》れたる糸の片端《かたはし》も眼を着《ちゃく》すればただ一筋の末とあらわるるに過ぎぬ。ただ一筋の出処《しゅっしょ》の裏には十重二十重《とえはたえ》の因縁《いんねん》が絡《から》んでいるかも知れぬ。鴻雁《こうが
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