《ふすま》をあけて、細君が茶を持って出る。高柳君と御辞儀《おじぎ》の交換をして居間へ退《しりぞ》く。
「いえ、少し転地しようかと思いまして」
「それじゃ身体《からだ》でも悪いんですね」
「大した事もなかろうと思いますが、だんだん勧める人もありますから」
「うん。わるけりゃ、行くがいいですとも。いつ? あした? そうですか。それじゃまあ緩《ゆっ》くり話したまえ。――今ちょっと用談を済ましてしまうから」と道也先生は鈍栗の方へ向いた。
「それで、どうも御気の毒だが――今申す通りの事情だから、少し待ってくれませんか」
「それは待って上げたいのです。しかし私の方の都合もありまして」
「だから利子を上げればいいでしょう。利子だけ取って元金は春まで猶予《ゆうよ》してくれませんか」
「利子は今まででも滞《とどこお》りなくちょうだいしておりますから、利子さえ取れれば好《い》い金なら、いつまででも御用立てて置きたいのですが……」
「そうはいかんでしょうか」
「せっかくの御頼《おたのみ》だから、出来れば、そうしたいのですが……」
「いけませんか」
「どうもまことに御気の毒で……」
「どうしても、いかんですか
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