「どうあっても百円だけ拵《こしら》えていただかなくっちゃならんので」
「今夜中にですか」
「ええ、まあ、そうですな。昨日《きのう》が期限でしたね」
「期限の切れたのは知ってるです。それを忘れるような僕じゃない。だからいろいろ奔走して見たんだが、どうも出来ないから、わざわざ君の所へ使をあげたのです」
「ええ、御手紙はたしかに拝見しました。何か御著述があるそうで、それを本屋の方へ御売渡しになるまで延期の御申込でした」
「さよう」
「ところがですて、この金の性質がですて――ただ利子を生ませる目的でないものですから――実は年末には是非入用だがと念を押して御兄《おあにい》さんに伺ったくらいなのです。ところが御兄さんが、いやそりゃ大丈夫、ほかのものなら知らないが、弟に限ってけっして、そんな不都合はない。受合う。とおっしゃるものですから、それで私も安心して御用立て申したので――今になって御違約でははなはだ迷惑します」
 道也先生は黙然《もくねん》としている。鈍栗《どんぐり》は煙草《たばこ》をすぱすぱ呑《の》む。
「先生」と高柳君が突然横合から口を出した。
「ええ」と道也先生は、こっちを向く。別段
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