より悲惨である。諸君は覚悟をせねばならぬ。勤王の志士以上の覚悟をせねばならぬ。斃《たお》るる覚悟をせねばならぬ。太平の天地だと安心して、拱手《きょうしゅ》して成功を冀《こいねが》う輩《はい》は、行くべき道に躓《つまず》いて非業《ひごう》に死したる失敗の児《じ》よりも、人間の価値は遥《はる》かに乏しいのである。
「諸君は道を行かんがために、道を遮《さえ》ぎるものを追わねばならん。彼らと戦うときに始めて、わが生涯《しょうがい》の内生命《ないせいめい》に、勤王の諸士があえてしたる以上の煩悶《はんもん》と辛惨《しんさん》とを見出し得るのである。――今日は風が吹く。昨日《きのう》も風が吹いた。この頃の天候は不穏である。しかし胸裏《きょうり》の不穏はこんなものではない」
 道也先生は、がたつく硝子窓《ガラスまど》を通して、往来の方を見た。折から一陣の風が、会釈《えしゃく》なく往来の砂を捲《ま》き上げて、屋《や》の棟《むね》に突き当って、虚空《こくう》を高く逃《のが》れて行った。
「諸君。諸君のどれほどに剛健なるかは、わたしには分らん。諸君自身にも知れぬ。ただ天下後世が証拠だてるのみである。理想の大
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