て教師を理想とする事が出来ますか」
「ノー、ノー」
「社会に在って紳士を理想とする事が出来ますか」
「ノー、ノー」
「事実上諸君は理想をもっておらん。家に在っては父母を軽蔑《けいべつ》し、学校に在っては教師を軽蔑し、社会に出でては紳士を軽蔑している。これらを軽蔑し得るのは見識である。しかしこれらを軽蔑し得るためには自己により大《だい》なる理想がなくてはならん。自己に何らの理想なくして他を軽蔑するのは堕落である。現代の青年は滔々《とうとう》として日に堕落しつつある」
聴衆は少しく色めいた。「失敬な」とつぶやくものがある。道也先生は昂然《こうぜん》として壇下を睥睨《へいげい》している。
「英国風を鼓吹《こすい》して憚《はば》からぬものがある。気の毒な事である。己《おの》れに理想のないのを明かに暴露《ばくろ》している。日本の青年は滔々として堕落するにもかかわらず、いまだここまでは堕落せんと思う。すべての理想は自己の魂である。うちより出《いで》ねばならぬ。奴隷の頭脳に雄大な理想の宿りようがない。西洋の理想に圧倒せられて眼がくらむ日本人はある程度において皆奴隷である。奴隷をもって甘んずるのみな
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