難にもかかわらず僥倖が少ないから幸福である。困難にもかかわらず力量しだいで思うところへ行けるほどの余裕があり、発展の道があるから幸福である。後期に至るとかたまってしまう。ただ前代を祖述《そじゅつ》するよりほかに身動きがとれぬ。身動きがとれなくなって、人間が腐った時、また波瀾《はらん》が起る。起らねば化石するよりほかにしようがない。化石するのがいやだから、自《みず》から波瀾を起すのである。これを革命と云うのである。
「以上は明治の天下にあって諸君の地位を説明したのである。かかる愉快な地位に立つ諸君はこの愉快に相当する理想を養わねばならん」
道也先生はここにおいて一転語《いってんご》を下した。聴衆は別にひやかす気もなくなったと見える。黙っている。
「理想は魂である。魂は形がないからわからない。ただ人の魂の、行為に発現するところを見て髣髴《ほうふつ》するに過ぎん。惜しいかな現代の青年はこれを髣髴することが出来ん。これを過去に求めてもない、これを現代に求めてはなおさらない。諸君は家庭に在《あ》って父母を理想とする事が出来ますか」
あるものは不平な顔をした。しかしだまっている。
「学校に在っ
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