剥《む》いて、火箸《ひばし》の先で突《つ》つき始めた。炭火なら崩《くず》しても積む事が出来る。突《つっ》ついた炭団は壊《こわ》れたぎり、丸い元の姿には帰らぬ。細君はこの理を心得ているだろうか。しきりに突ついている。
 今から考えて見ると嫁に来た時の覚悟が間違っている。自分が嫁に来たのは自分のために来たのである。夫のためと云う考はすこしも持たなかった。吾《わ》が身が幸福になりたいばかりに祝言《しゅうげん》の盃《さかずき》もした。父、母もそのつもりで高砂《たかさご》を聴いていたに違ない。思う事はみんなはずれた。この頃の模様を父、母に話したら定めし道也はけしからぬと怒《おこ》るであろう。自分も腹の中では怒っている。
 道也は夫の世話をするのが女房の役だと済ましているらしい。それはこっちで云いたい事である。女は弱いもの、年の足らぬもの、したがって夫の世話を受くべきものである。夫を世話する以上に、夫から世話されるべきものである。だから夫に自分の云う通りになれと云う。夫はけっして聞き入れた事がない。家庭の生涯《しょうがい》はむしろ女房の生涯である。道也は夫の生涯と心得ているらしい。それだから治《お
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