真中に金紙《きんがみ》の烏帽子《えぼし》を被《かぶ》って、真白に顔を塗りたてた女が、棹《さお》のようなものを持ったり、落したり、舞扇《まいおうぎ》を開いたり、つぼめたり、長い赤い袖《そで》を翳《かざ》したり、翳さなかったり、何でもしきりに身振《しな》をしている。半紙に墨黒々と朝妻船《あさづまぶね》とかいて貼《は》り出してあるから、おおかた朝妻船と云うものだろうと高柳君はしばらく後《うし》ろの方から小さくなって眺《なが》めていた。
舞台を左へ切れると、御影《みかげ》の橋がある。橋の向《むこう》の築山《つきやま》の傍手《わきて》には松が沢山ある。松の間から暖簾《のれん》のようなものがちらちら見える。中で女がききと笑っている。橋を渡りかけた高柳君はまた引き返した。楽隊が一度に満庭の空気を動かして起る。
そろそろと天幕《テント》の所まで帰って来る。今度は中を覗《のぞ》くのをやめにした。中は大勢でがやがやしている。入口へ回って見ると人で埋《うずま》って皿の音がしきりにする。若夫婦はどこにいるか見えぬ。
しばらく様子を窺《うかが》っていると突然万歳と云う声がした。楽隊の音は消されてしまう。石
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